大手雑誌出版社が実践する出版DXとは?導入効果について解説

出版物の制作現場では、多くの関係者が連携し、緻密な工程を経て一つの作品が完成します。しかし、その過程においては、工程によって制作担当者が異なることによる煩雑なファイル管理、頻繁に発生する修正による複雑な版管理など、多くの課題が存在しているのではないでしょうか。本コラムでは、業務効率化に成功した大手雑誌出版社が実践する出版DXについて実際の課題と解決手法についてご紹介します。

出版社が導入しているDXソリューションWoodWing Studioとは?
この製品はInDesignをベースとしたオンライン編集に対応し、従来使用しているInDesignでのデザイン・レイアウト作業はそのままに、オンラインで共同作業する事による効率化や正確なファイル管理を実現する機能を備えています。
さらに、マルチチャネル配信にも対応しております。「ニュートラルコンテンツ」というプリントメディア(InDesign)とデジタルメディア(HTML5)の双方に変換できる独自フォーマットをサポートしており、理想的なマルチチャネル配信を実現します。
マルチチャネル配信の最大のメリットは、同じコンテンツを活用し、再作成することなくモバイル・ウェブ・印刷といった複数のチャネルに活用できる点です。異なるチャネル間での一貫性を保ちつつ、即時性のある情報配信に対応することが可能です。
これにより、編集者やデザイナーの作業時間を削減し、より創造的な業務に専念できるようになります。WoodWingStudioについて詳しくは"製品サイト"にてご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
大手雑誌出版社における活用方法
今回は出版業務を効率化するために出版DXソリューションWoodWingStudioを導入し、業務効率化とコスト削減に成功した大手出版社の事例をご紹介します。
【WoodWingStudio導入前の課題】
同社では出版物の制作において、InDesignファイルや画像、テキストといった入稿に必要なファイルを、印刷会社が提供する共有サーバーで管理していました。ファイルの更新作業が発生するたびに、担当者は共有サーバーから該当のファイルをダウンロード。更新後は、ファイル名を変更し、専用のフォルダーへ移動させることで、版管理を行っていました。一方でライターやカメラマンとのファイルの受け渡しは個別のデリバリーツールを利用していました。さらに、全体の進行管理に関しては、各担当者がExcelの表を手動で更新していましたが、更新漏れが発生するため、最新の進行状況は進行管理担当者が都度確認をしていました。 これらの結果、次のような課題が発生していました。
- 制作工程での待ち時間の発生 誌面レイアウトはデザイナー、記事はライター、修正指示は編集者だがInDesignの修正作業を行うのはオペレーターというように、各工程で多くの関係者が関わり制作を進める出版物の性質上、誰かの作業中や仲介のタイミングで待ち時間や余剰時間が発生していました。これは、全体のスケジュールを遅延させ、リソースの有効活用を妨げる大きな課題となっていました。
- 複雑なバージョン管理 ファイル名の変更やファイルの移動などの手動でのバージョン管理となっていたため、最新のファイルがどれか分からなくなるケースもありました。これにより、古いバージョンのファイルを誤って使用するなどのミスが発生するリスクが高まり、品質に影響を及ぼすことがあります。
- 分散的なファイル共有と管理に起因する非効率性 先述の通り、編集の度にファイルの受け渡しが発生し、受け渡し方法としても関係者ごとに異なる方法で行なっていました。また、各担当者がローカルPCや個別のフォルダにファイルを管理するケースも多くあり、ストレージ容量の逼迫も問題となっていました。この分散的なファイル共有と管理は、ファイル探索時間の増大と重複による取り間違いにもつながります。また、担当者不在時のファイルアクセス不能による業務停滞を引き起こします。結果として、情報共有の遅延やミスを誘発し、制作全体の生産性を低下させる要因となっていました。
- 進行管理 共有のExcelを作成し、各担当者が手動で情報を入力して進行管理を実施していました。そのため、担当者による更新の漏れも多々あり、最新の情報に関しては、進行担当者が都度確認する必要があり、担当者間の連携不足や情報共有の遅れにより、最新の進行状況の把握や作業調整が遅延するケースがありました。結果として、スケジュール遅延や品質低下に影響を与えます。また、変更や修正の履歴管理が煩雑なため、責任の所在が曖昧になり、無駄な手戻りを発生することもありました。
【WoodWingStudio導入後の成果】
WoodWingStudioを導入した結果、次のような効果が得られました。
- オンラインでの共同編集 WoodWingStudioは、クラウドベースで編集者・デザイナー・ライターなど複数のスタッフによる同時編集が可能になります。そのため、取材先からなどいつでもどこからでも編集や確認作業を実施しています。また、物理的なファイルの受け渡しや紙ベースでの校正作業が不要となったため、手作業による非効率性やコミュニケーションの煩雑さが解消され、業務プロセスを大幅に効率化することができました。
- 自動でのバージョン管理 ファイル保存のたびに過去バージョンが自動で保存され、かつ変更履歴が自動的に記録されるため、手作業での版管理は不要になります。また、過去のファイルへの遡りが容易になるため、誤った変更やトラブル発生時にも迅速に復旧でき、版管理の煩雑さを解消します。これにより、手戻りを減らし、常に最新の状態で作業を進めることができています。
- 制作に関わるファイルの一元管理が実現 原稿、画像、デザインなどファイルを各テーマや特集、ページごとに一箇所に集約することで、検索や共有が容易になり、情報へのアクセスが迅速化します。これにより、担当者間の連携がスムーズになり、ファイルの散逸や重複を防ぎ、効率的な制作進行とミスの削減に繋がりました。
- ワークフローに紐づく進行管理 特集フォルダーやInDesignなどのファイルに紐づけて進行管理が可能です。ファイル保存時に必ず表示される確認画面にて、進行ステータスを設定できるため、別のツールを使わず進行管理が実現できました。そのため、更新漏れや別ツールを使った煩雑な管理から解放され、最新の進行状況をすぐに確認することができています。

出版DX化の実現に向けた導入支援
現行フローの詳細なヒアリングに基づいた業務設計では、企画から印刷所への入稿までのファイル管理、関係者との連携、進捗管理における課題を徹底的に可視化。その上で、システム導入後の具体的な業務改善ポイントを洗い出し、最適な運用方法を提案しました。
運用方法が確定した後も、すぐに全面的な導入に踏み切るのではなく、現場の混乱を避けるため、徐々に利用範囲を拡大していく慎重なアプローチを取りました。運用開始後も、現場から寄せられる課題に対して、改善策を提案し、より良いシステム運用へと繋げていく。
このような段階的な導入と、きめ細やかなサポート体制を構築することで、担当者が安心して新しいシステムに慣れ、日々の業務で活用できるよう支援しました。
その結果、同社では大きな混乱もなくDXがスムーズに立ち上がり、ファイルの一元化、版管理の効率化、編集作業の効率化、進捗のリアルタイム把握など、業務効率の向上を実現しました。
DAM(デジタルアセット管理)との連携による更なるDX化
【DAMの活用による効果について】
- 過去資産の有効活用 DAMにアーカイブファイルを一元管理することで、過去の実績やコンテンツ制作に必要な情報に、いつでもどこからでもアクセスし、再利用することが可能になります。
- 著作権管理の徹底 出版コンテンツの制作において重要な著作権の管理はDAMで行います。使用期限や利用制限はDAMから自動的にアラートとして情報配信されるので安心して制作を進めることが可能です。
- マルチチャネル展開の効率化 誌面利用画像や未使用画像をDAM上でトリミング・変換することで、デジタル媒体へのファイル提供をスムーズに行うことができます。
まとめ
ネットワークを介した共同編集、マスターファイルの一元管理、自動バージョン管理といった機能は、制作効率を飛躍的に向上させ、人的リソースの有効活用とコスト削減を実現します。
導入事例で記載されている通り、手戻り率の削減、コミュニケーションの円滑化、Web展開の迅速化、そして版管理の徹底といった具体的な効果が期待できます。情報伝達のスピードが加速する現代において、一度制作したコンテンツを最大限に活かすWeb展開に関しても不可欠であり、WoodWing Studioはそのための強力なツールとなります。
出版業務の煩雑さから解放され、DXを推進し、新たな出版の可能性を追求するために、ぜひWoodWing Studioの導入をご検討ください。
ご興味をお持ちいただけましたら、弊社のウェブサイトからお気軽にお問い合わせください。