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WOOD WING

出版業のDX化を牽引するWoodWing社・VPJの代表対談

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この度、VPJとWoodWing社のCEOが出版業界DX化をテーマとした対談を行いその記事がビジネス+IT掲載されました。

WoodWing社は、DX化を実現するための編集ワークフローソリューションを世界の出版社に提案しています。本記事の中ではその豊富な実績をもとに変化するメディア環境や働き方に対応するために必要な心構えや最適なソリューションについて語っています。

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今こそ必要な“出版DX”の進め方

出版産業は、紙媒体の売り上げがピーク時から大きく落ち込んでいるが、一方で電子書籍等のデジタル媒体が着実に受け入れられつつある。出版は今、紙とデジタルの両方に対応したコンテンツ展開が必須といえるだろう。だが、印刷のみを前提にしていた従来の制作現場では、電子化に伴う作業で負担が増加している。さらに、コロナ禍における非対面の制作業務は効率が低下するなど課題は山積している。どうすれば業務効率化を達成できるだろうか。

出版業界のデジタル化と生産性向上の課題

日本国内の出版産業は、ピーク時の1997年から2018年にかけて約半分まで落ち込み、現在は下げ止まりの傾向はあるものの、縮小が甚だしい業界だ。一方で電子出版市場は、2020年のデータでは出版市場全体の24.3%を占め、そのうち電子コミックは31.9%増となっている。デジタル市場の伸びにより、少し明るい兆しが見えてきたといえるだろう。

 こうした状況から、出版業界が生き残るには、紙媒体だけでなくWebやスマートフォン、タブレットに対応したコンテンツを展開することが必須だ。

 だが、印刷コンテンツを電子化するには、Web用に再加工したり、EPUB(電子書籍ファイルの規格の1つ)に対応するためにオーサリングしたりする必要がある。つまり現状の業務からさらに別の仕事が増えるわけであり、いかに効率的に対処していけるかが課題となる。

 生産性に関しては、新型コロナウイルスの影響も甚大だ。リモートワークを余儀なくされたことから、コンテンツ制作業務に支障をきたしている。PCとDTP系ソフトを自宅に持ち帰り、コミュニケーションが乏しい環境で社内サーバやクラウドを介してデータを共有していると、どれが最新なのか混乱を来しやすく、データ量が多いために貴重な時間のロスも発生する。また、テキストやデザインの変更を的確に伝えることも困難だ。

 こうした課題を踏まえると、これからのコンテンツ産業でいくつか必要な観点が見えてくる。1つに、離れていても共同でコンテンツ制作を円滑に進められることだ。さらにもう1つが、Webなどへの対応のためにワンソースから複数チャネルへコンテンツを制作・配信できる仕組みである。

出版業界のDXと必要な考え方

「紙媒体の制作・編集とデジタルのサイロ化を解消し、プロセスやテクノロジーのデジタルトランスフォーメーション(DX)を考えるべきです」と語るのは、オランダWoodWing SoftwareのCEOを務めるRoss Paterson氏だ。同社は、グローバルで約800社が利用する出版社向けコンテンツ管理システムを手がける企業だ。

編集者やライターによって作られたコンテンツは、デジタルプラットフォームを介し、いまやアプリやWebサイト、雑誌などさまざまな媒体へアウトプットされる。印刷はあくまでそれらのチャネルの1つに過ぎない。従来は1つのチャネルに対し1つのチームが対応するのが通常であった。しかし、Paterson氏によると今ではデジタルツールの進化によって1つのチームが複数のチャネルに対応できるようになったという。出版業界でも、既存の業務フローにとらわれずデジタルの仕組みを取り入れられ、いかに効率的に業務をこなすかが問われている時代だ。

「出版業界における最大の試練は、編集スタッフなどすべての出版に関わる人々が、この新しい考え方を持つことができるかどうかでしょう。チェンジマネジメントの領域になるかもしれません。従来の方法で仕事をしていた人々がどのように新しい考え方のもと、新しいワークフローに則って働いていくようになるのか。この変革を成し遂げるのが、DXを実現する道程で試練となります」(Paterson氏)

オンライン編集とクロスメディアパブリッシングを実現

まさに上述した出版業界のデジタル変革を支援するツールが、WoodWing Softwareの提供する「WoodWing Studio」である。これは、オンライン編集とクロスメディアパブリッシングを実現できる画期的なシステムだ。
 オンライン編集とは、編集者、デザイナー、ライターなど異なる役割のスタッフが、クラウド上の一元管理されたデータにアクセスし、協働してコンテンツを制作できる仕組みである。

 具体的には、Adobe InDesignで作成されたレイアウトデータをマスターデータとして共有して、それぞれの仕事を進めていく。デジタルアセット管理機能を搭載しているため、作成された記事や写真、誌面、動画といったすべてのコンテンツをクラウド上で管理し、共有、テキスト/デザイン編集、検索フォーマット変換ダウンロードなどをすべてオンラインで行える。

 ライターはレイアウトを確認しながらブラウザ、またはAdobe InCopy を使って記事編集を進める。編集者はブラウザから台割上で誌面データの進捗状況を確認し、修正指示をオンラインで伝えることができる。このように、従来であれば関係者が一堂に会した打ち合わせが必要な場面も、オンライン化が可能だ。

 もう1つの大きな機能であるクロスメディアパブリッシングとは、InDesignで作成された紙面をWeb、スマートフォンやタブレットなどの複数デバイスに配信できる仕組みだ。InDesignファイルをWebテンプレートに流し込み、オンラインエディタでフォントやデザイン調整を行うだけで素早くHTML5のレスポンシブデザインを生成できる。

大きな特徴はWebファーストに対応していることだ。紙面とWebの双方に対応できる「ニュートラルコンテンツ」を作成し、CMSやSNSへ配信し、さらにInDesign変換を行って紙面として印刷可能だ。

「ワークフローエンジンを搭載していることも大きな特徴です。スタッフの役割や、新しいビジネスプロセスを踏まえたワークフローを構築することができるため、コンテンツ制作のDXを進めるだけでなく、ワークフロー、働き方も変革していくことができます。特定のプロセスに沿って、適したワークフローで制作を進めることができるようになるので、非常に効率的です」(Paterson氏)

 またPaterson氏 はこう続ける。「Adobe製品との連携能力が優れていることもポイントでしょう。雑誌や教科書/教材にとってデザインは非常に重要です。多くの顧客からこの連携機能を評価いただいています」

世界で800以上の出版社が利用するWoodWing製品

WoodWing Softwareの製品は、日本国内で約25社、海外では約800社に採用されている。
 日本での最大ユーザーは教科書を制作している光村図書出版だ。WoodWingを導入して10年以上使用しているという。教科書制作に関わるスタッフは内外部含めて、非常に大人数になり、1つのプロジェクトに100名以上が参加することもある。そのやり取りの効率化にWoodWing Studioを利用しているという。

 WoodWing Softwareのパートナーとして、日本国内での販売を担っているビジュアル・プロセッシング・ジャパンの代表取締役社長 三村 博明氏はこの事例を次のように説明する。
「多くの関係者で進捗確認や情報統一をするために編集会議が定期的に行われていましたが、WoodWingによって台割ベースのわかりやすい形で進行状況を確認できるようになりました。グラフィックデザイナーがデザインデータを入稿したのか、ライターが入稿したのかなど、すべて色分けされて進行表で管理されます」

 教科書制作では検定があり修正も多く、編集が進むにつれて複数の版ができてしまう。WoodWingの導入によって、編集するデータが正しいかどうかに一切気を使わなくてよくなり、ストレスを軽減し、編集業務に集中できるようになったという。

「ブラジルでも多くの教育系出版社がDXの必要性を感じており、政府もDXを支援しています。たとえばPoliedroさまは、光村図書出版さまと非常に似た課題をお持ちでした。今はWoodWingを利用しコンテンツ制作に集中できるようになっています。作業を効率化できたことで、より少ない人的リソースでコンテンツ制作が可能になりました。このようなビジネスベネフィットはさまざまな顧客で見られます」(Paterson氏)

 国内では、週刊ダイヤモンドの編集部でも利用されている。ダイヤモンドグラフィック社では、WoodWingの進捗管理機能を利用して、編集会議で進行中の誌面イメージや内容を確認し、修正点や変更点を即座にデザイナーやオペレータに指示ができるようになった。週刊誌はスケジュールが特にタイトなだけに、このような効率化の価値は大きいだろう。
 グローバルでは、60カ国以上に展開するHearstもWoodWingを利用している。日本法人であるハースト婦人画報社でも、WoodWingのオンライン編集機能によって、編集者はどこにいても紙面に直接テキストを編集できる体制を整えている。メリットはそれだけでない。デザイナーとの字数調整のやり取りや、それに伴う先祖返りなどの問題発生も抑止している。また、進行の確認もPDF書き出し・出力などを介さずに行えるようになった。

テクノロジーと世界の知見を活かして出版業界のDXを推進

 Paterson氏は、Woodwingの提供価値を次のように説明する。

「日本の出版社が抱えている課題は、世界各地の出版社が抱えているものと似通っているように思います。WoodWingは、世界各地にパートナーを抱えており、編集ワークフローやコンテンツ制作についての知見を豊富に持っています。WoodWingはテクノロジーに投資し続け、将来のトレンドに備え、出版業界のDXを支援します」
 世界的な出版社の多くがWoodwingを使っており、顧客どうしで知見・経験を共有することも多いという。Paterson氏は「ぜひ日本の出版社の方々にも、参加して情報を吸収していただきたいと思います」と呼びかける。

 一方の三村氏は、こう続ける。
「日本の出版社は、IT化、DXにおいて欧米と比較すると遅れているように感じています。媒体としての印刷はなくならないと思いますが、デジタル化は出版社にとって必須となっています。ただ、紙媒体の記事をWebなどデジタルにするとマネタイズが難しいことから、生産性を上げてコストをかけずにコンテンツを作っていく方法を採るべきです」
 コロナ禍は、WoodWingが提唱する新しいコンテンツ制作方法が定着する好機であるともいえるが、三村氏によると、いまだに多く企業ではGoogle Driveなどオンラインストレージなどでファイル共有する手法をベースとした業務から離れられないのが実態だという。これではコンテンツ管理が煩雑になり生産性向上は進みづらい。単純なファイル共有ではワークフローの共有はできないからだ。

 今こそ制作業務にワークフローを活用するときであり、両社によるWoodWingを活用した業務改善のアプローチは、出版業界のDXを進める上で非常に有益なものとなるだろう。
最終更新日: 2024-09-19 at 16:48
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執筆者情報

ビジュアル・プロセッシング・ジャパン編集部です。マーケティングや商品、コンテンツ管理業務の効率化等について詳しく解説します。

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