制作現場が歓喜した 大手アニメスタジオがDAM導入に踏み切った3つの理由

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アニメ制作の現場は、今やデジタル化が当たり前になりました。とはいえ、現実のワークフローには未だに「データが散らばって見つからない」「修正指示が追えない」「誰がどの素材を使っているのかわからない」といった悩みが山積しています。

こうした混乱は、小規模なプロダクションに限らず、テレビシリーズや劇場版を多数手がける大手アニメスタジオでも起きている問題です。制作素材が膨大に増え、関係者も多岐に渡る中で、従来の“ファイル置き場”としてのクラウドやファイルサーバーだけでは限界が来ていたのです。そこで注目されているのが「DAM(デジタルアセット管理)」という考え方。すでに一部の大手スタジオでは、アニメ制作に特化したDAMシステムを導入し、大きな成果を上げています。
本コラムは、実際にDAMを導入した大手スタジオの背景をもとに、「なぜ導入に踏み切ったのか?」その3つの理由を、制作現場のリアルな課題とともに紐解いていきます。

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1. なぜ今、アニメスタジオがDAM導入に動き出したのか?

アニメ制作の世界では近年、制作体制の複雑化とスピード化が急速に進んでいます。その結果、これまで感覚的に運用されてきた「素材の管理」や「制作フローの共有」に、限界が訪れています。以下は、特に大手アニメスタジオにおいてDAM導入が求められる背景です。

1-1. デジタル化と素材の爆発的増加

近年のアニメ制作では、作画はもちろん、3DCG、VFX、背景、音声、編集データなど多種多様な素材がデジタル化されて使われます。さらに4Kや8Kといった高解像度制作、複数言語バージョン、マルチプラットフォーム展開などにより、1タイトルあたりの素材点数とバリエーションが爆発的に増加しています。従来のファイルサーバーやクラウドストレージでは、「どこに何があるか分からない」「古いファイルを間違って使う」といった問題が頻発し、現場の負荷も大きくなっています。

1-2. 制作拠点・外注先との連携が増加

複数のスタジオ間での共同制作や、海外の制作拠点・外注先との連携も今では当たり前です。しかし、異なる場所・異なる人が関わる以上、情報共有や素材のバージョン管理、使用許可のやり取りが煩雑になりがちです。DAMを使えば、素材のステータス・承認状態・バージョン履歴などを一元的に管理・共有でき、グローバルな制作でも混乱を防ぐことが可能になります。

1-3. セキュリティ・コンプライアンス意識の高まり

近年、著作権やコンテンツの流出に対する業界全体の意識が高まっています。特にアニメは人気IP(知的財産)を扱うことが多いため、制作段階での情報漏洩リスクは極力抑える必要があります。DAMには、閲覧権限の制御やダウンロード制限、操作ログ管理などのセキュリティ機能が標準で備わっており、「誰が・いつ・どの素材にアクセスしたか」を明確にできます。

このような背景から、単なる素材置き場ではなく、業務の中核として“管理・共有・活用”を最適化するプラットフォーム=DAMが、アニメ制作現場にとって“なくてはならないインフラ”になりつつあります。

2. 大手アニメ制作会社がDAMを導入した3つの理由

2-1. 制作素材を一元管理して「探さない時間」を創出

アニメ制作現場では、1作品あたり数千〜数万点に及ぶ素材が日々やり取りされます。原画・動画・仕上げ・美術・音響・編集……と工程が進むにつれて、それぞれの工程で派生する素材も膨大になります。しかも、それらの多くは類似ファイル名・微妙なバージョン違い・異なる格納場所という「探しにくさ」を抱えています。

■「あの素材、どこだっけ?」に費やす時間は1日30分以上

ある制作会社の例では、スタッフ1人あたり、1日30分以上が“素材探索”に使われていたというデータもあります。特に後工程になればなるほど、「過去のバージョンを参照したい」「作監チェック済みのものを使いたい」といった細かな確認が必要になります。しかし、その度にローカルPCやクラウドを漁ったり、同僚にチャットで確認したりと、非効率なコミュニケーションが発生してしまうのが現状です。

■DAM導入で“目的の素材”に最短アクセス

DAMでは、あらかじめメタ情報(作品名、カット番号、工程ステータス、担当者、使用キャラ名など)を付与しながらファイル登録できるため、欲しい素材を検索で瞬時に特定できます。また、同じ素材に複数のタグをつけておくことで、用途に応じた横断的な探し方も可能になります。さらに、過去に使用されたバージョンや他作品との共通素材もすぐに参照できるため、“探す時間”の削減が“考える時間”の確保につながるのです。

■AI × DAM によってさらなる利便性向上

さらに近年では、DAMにAI技術を組み合わせた検索支援機能の導入が進んでいます。たとえば、OCR(文字認識)や音声認識の技術を活用することで、動画や画像の中に含まれるテキストやセリフ、キャラ名、タイムコードといった情報を自動で抽出・タグ化することが可能になっています。これにより、ファイル名や格納場所を知らなくても、「このシーンで◯◯が話していたカット」「看板にこの文字が入っていた背景」といった曖昧な記憶ベースの検索でも、目的の素材に素早くアクセスできるようになります。

2-2. チェック・修正指示のワークフローを統合

アニメ制作では、素材のやり取りと同じくらい重要なのが「チェックと修正指示」です。作画監督や演出、監督などの各チェックポイントで、細かな指示や承認プロセスが日常的に発生します。しかし、これらのやり取りは往々にしてメール・チャット・口頭・付箋・紙などバラバラな手段で行われており、「言った/言わない」「確認漏れ」などのトラブルが後を絶ちません。

■修正履歴が追えない…“伝達ミス”による二度手間の連続

例えば、原画に対する修正指示がLINEやSlackで共有され、その後に別のバージョンが別ツールで送られてくる…というようなケース。どれが最新で、どこが直されたのかが分からなくなるのはよくある話です。特にリモート制作や海外との連携では、情報の齟齬が命取りになります

■DAMならチェックと指示を“1つの画面で完結”

DAMには、素材に対してプレビュー、注釈(アノテーション)、承認リクエスト、バージョン比較などの機能が統合されています。これにより、チェックする側もされる側も、「どのファイルに、どのタイミングで、誰が何を指示したか」を可視化しながら作業できます。

  • レイアウトに直接ペンツールで修正指示を書き込み
  • 承認・差し戻しのステータスを即反映
  • 修正後ファイルをアップすると、自動でバージョンを統合

このようにチェック&修正指示の履歴が一元的に残ることで、誰がどこまで確認したかをチーム全体で共有でき、制作の停滞や無駄なやり直しを未然に防げるのです。

2-3. セキュリティと権限管理で「安心の外部共有」

アニメ制作では、社内だけで完結する案件はほとんど存在しません。背景美術、CG、動画、仕上げ、音響、翻訳、字幕、配信…と、多数の外部パートナーや委託先との連携が不可欠です。そこで必ず発生するのが、「どうやって素材を安全に渡すか」という課題です。

■ファイル転送でヒヤリ…共有リンクの流出リスク

メール添付、ファイル転送サービス、クラウド共有リンクなど、日常的に使われる手段の多くは、誤送信やリンクの流出による情報漏洩リスクを抱えています。特にアニメ作品は、未公開のキャラクターデザインや絵コンテなど、漏れると即炎上につながる機密情報が多数存在します。また、誰がいつアクセスしたかが把握できない環境では、問題が起きた際に追跡が困難で、コンプライアンス上の問題にも発展しかねません。

■DAMなら「誰に・何を・どこまで」明確にコントロールできる

DAMでは、ファイルごとに閲覧・ダウンロード・アップロード・承認などの細かな操作権限を設定できます。これにより、外部パートナーに対しても、「必要な素材だけを」「決められた期間・操作範囲で」「安全に提供」することが可能です。さらに、すべての操作履歴が自動でログに残るため、「いつ・誰が・どの素材にアクセスしたか」を可視化でき、万が一の時も安心です。

制作スピードが求められる中でも、セキュリティを犠牲にしない素材共有の仕組みを整えることが、現代のアニメスタジオには不可欠です。DAMは、その両立を現実にしてくれる存在と言えるでしょう。

3. 海外でも進む、アニメーション制作におけるDAM導入

日本のアニメ制作がグローバル市場で評価される一方で、制作体制そのものは海外と比べて大きく出遅れている部分もあるのが現実です。特に「デジタルアセット管理(DAM)」の分野では、海外のスタジオがいち早くその重要性に気づき、組織的な導入を進めています。

3-1 海外の大手アニメーションスタジオが重視する“制作の仕組み”とは?

たとえばハリウッド作品を手がけるグローバルスタジオの多くでは、アーティストが作品づくりに集中できるよう、素材の管理・共有・承認の仕組みが細部まで整備されています。素材のファイル名や保存場所に依存せず、「作品名」「シーン番号」「担当」「進行状況」などのメタ情報ベースで検索・フィルタ・管理できるDAM環境は、作品クオリティを支える“制作インフラ”の一部として位置付けられています。また、リモートワークやグローバルな分業が進む中で、誰が・どこからでも、統一されたプロセスで素材を扱える環境整備は、制作効率だけでなくセキュリティやIP保護の観点からも不可欠とされています。

3-2 海外共同制作で求められる「共通言語」としてのDAM

実際、日本のアニメスタジオが海外と共同制作を行う場面では、「素材の管理ややり取りが非効率」「データ受け渡しのルールが曖昧」といったギャップが問題になることもあります。こうしたとき、DAMがあることで、“制作工程と素材の共通言語”が生まれ、スムーズな連携が可能になります。たとえば、「この素材は承認済みか?」、「このバージョンはどの工程用か?」、「いつ誰がアップしたのか?」といった情報がDAM内で明確に可視化されることで、**国や組織の垣根を越えたチーム制作が実現できるのです。

4. 国内でも進むDAM導入──トムス・エンタテインメントが制作基盤を刷新

海外スタジオに限らず、日本国内のアニメ制作現場でもDAMの導入が進み、着実に成果を上げています。その代表例が、人気アニメ『名探偵コナン』シリーズなどを手がけるトムス・エンタテインメントです。同社では、膨大な作品アーカイブデータの資産管理と作品素材の有効活用を目的にVPJのDAM「CIERTO」を導入しました。

同社では累計約470作品あり、1つの作品につき約16種類のフォルダ(原稿種別)とファイル点数は1作品最大約40,000点にも及び、CIERTOでは現在約4,000,000ファイルを管理しております。
※原稿種別例:タイトルロゴ、キービジュアル、場面写真、絵コンテ、原画、パンフレット等。これら膨大なアーカイブデータから作品に関わる情報を検索する際に、データベースとAIにより検索性を高め、効率的且つ正しい情報での素材活用と資産管理を実現できるようになりました。

同社のCIERTO活用事例の詳細は、こちら(株式会社トムス・エンタテインメント様 CIERTO導入事例)

5. 制作業務に特化したDAM「CIERTO(シエルト)」とは?

CIERTO(シエルト)は、アニメ・映像・広告などのクリエイティブ制作現場に特化して開発された国産のデジタルアセット管理(DAM)システムです。制作ワークフローに沿った柔軟な設計が可能で、さまざまな制作体制に対応できる点が高く評価されています。
主な特長は以下の通りです。

  • 工程別・担当別にメタ情報を付与した素材管理
    → カット番号・話数・進捗など、制作現場で使われる軸で検索可能
  • チェック・承認フローを一元化
    → 注釈(アノテーション)、差し戻し、承認履歴がすべて残る
  • 外部パートナーとのセキュアな素材共有
    → ダウンロード制限やアクセスログ、権限管理も柔軟に設定可能
  • AI連携によるOCR・音声認識・類似検索対応
    → 文字が含まれた背景、音声内のセリフ、似た構図の素材も横断検索可能に

多くの制作会社がCIERTOを導入している理由は、単なる「保管庫」ではなく、“制作の進行を支えるシステム”として設計されているからです。CIERTOに関する詳細の紹介は、こちらのCIERTO製品サイトもしくは資料ダウンロードよりご確認ください。

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6. まとめ:アニメ制作の未来を支える“インフラ”としてのDAM

アニメーションの制作現場では、年々増え続ける制作素材、多拠点・多工程での制作進行、短納期化、グローバル対応…といった複雑化・高速化する現実に直面しています。こうした中、DAM(デジタルアセット管理)は単なる「ファイル管理ツール」ではなく、制作ワークフロー全体を支える“インフラ”のような存在として注目を集めています。中でもCIERTOは、アニメ制作の複雑なワークフローに柔軟に対応し、「探さない」「迷わない」「共有ミスが起きない」制作環境を実現できる現場密着型のソリューションです。

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執筆者情報

ビジュアル・プロセッシング・ジャパン編集部です。マーケティングや商品、コンテンツ管理業務の効率化等について詳しく解説します。

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