クリエイティブ業務を革新するAI搭載DAMの実力

広告やマーケティングの現場では、日々膨大な数のクリエイティブが生み出されています。PhotoshopやIllustratorで作るビジュアル、Premiere Proで編集する動画、さらにはSNSやECサイト向けの多様なコンテンツ―。
しかし、その制作プロセスは決してスムーズとは言えません。ファイルの所在確認、バージョン違いによる混乱、承認待ちでの停滞…。制作に集中したいはずが、管理や調整に時間を取られているのが実情です。
そこで注目を集めているのが、AIを搭載したデジタルアセット管理(DAM)システム。従来の「管理するだけのDAM」とは一線を画し、制作現場とマーケティング部門双方に大きなメリットをもたらします。
まずは、クリエイティブ業務が直面している課題を整理してみましょう。

1. クリエイティブ業務が抱える課題
■ファイルの検索・整理にかかる膨大な時間
制作現場では、「あのキャンペーンで使った画像はどこ?」「最新版はどのデータ?」と探し物に追われる場面が少なくありません。特にファイル名やフォルダ構造に依存した運用では、必要な素材を探し当てるまでに数十分、時には数時間かかることもあります。その結果、本来クリエイティブに割くべき時間が削られてしまいます
■バージョン管理や承認フローの非効率性
同じデザインデータが複数人の手に渡り、異なるバージョンが乱立する…。よくある光景です。「どれが最新かわからない」「承認済みか未承認かわからない」といった混乱は、修正や差し戻しを生み、納期に直結します。特に外部の広告代理店や協力会社とやり取りする場合、この混乱はさらに増幅します。
■部署間・外部パートナーとのデータ共有トラブル
マーケティング部門や代理店が「過去に使った素材を再利用したい」と思っても、制作チームに都度依頼しなければならないケースが多くあります。メールやチャットでのやり取りが増え、最新版のデータが共有されていなかったり、誤って古いデータが使われてしまったりといったトラブルも発生します。結果として、業務スピードが落ち、ブランドイメージの一貫性にも影響を及ぼします。
このように、現場では「制作そのもの」ではなく「制作にまつわる周辺作業」に時間と労力が奪われています。次章では、これらの課題に対応してきた従来型DAMの役割と、その限界について見ていきます。
2. DAMとは?従来のDAMの役割と限界
2-1. デジタルアセット管理(DAM)の基本機能
DAM(Digital Asset Management)は、写真・動画・デザインデータ・ドキュメントなど、あらゆるデジタル資産を一元的に管理するシステムです。
フォルダやローカルPC、クラウドストレージに散らばりがちなファイルを一箇所にまとめ、権限管理やアクセス制御を行うことで、「誰がどの素材を使えるのか」を明確にします。制作チームはもちろん、マーケティングや広報、代理店など、複数の関係者が関わる現場においては、こうした集中管理が業務の土台を支えます。
2-2. 制作現場でのDAM活用シーン
たとえば広告キャンペーンのビジュアル制作では、過去に使用した素材やブランドの基本デザインをDAMから探し出し、PhotoshopやIllustratorで編集します。
マーケティング部門は、新製品発表やSNS投稿の際に、承認済みの画像や動画をDAMからダウンロードして活用します。また、代理店はクライアントから提供された素材をDAM経由で受け取り、企画や制作に反映させるといった使い方も一般的です。
2-3. 従来型DAMの課題:管理はできても「活用」しきれない
従来型のDAMは「ファイルを整理して守る」ことに強みを発揮してきましたが、それだけでは制作現場のニーズを満たしきれませんでした。
- 検索性の限界:ファイル名や手作業で付けたタグ頼みで、目的の素材を探すのに時間がかかる
- 再利用の難しさ:似たような素材が既にあるのに、見つけられずに新規制作してしまう
- ワークフロー断絶:Adobeアプリや制作環境と直結していないため、結局は「ダウンロードしてローカルで編集、またアップロード」という非効率な作業が発生
- 活用の視点不足:どの素材がよく使われているか、どの施策に効果があったかといった分析が弱く、単なる保管庫にとどまってしまう
その結果、マーケティングや広告代理店から見ると「DAMがあるのに必要なデータが探せない」「結局担当者に聞いた方が早い」という状況になり、せっかくの資産が十分に活かされないという課題がでるケースがあります。
3. AI搭載DAMがもたらす革新
■高精度検索:画像・動画・テキストを瞬時に探し出す
AI搭載DAMの大きな特長は、検索精度の圧倒的な向上です。
画像認識AIがファイルの中身を自動的に解析し、「青い背景の女性モデル」「笑顔で商品を持っている人物」といったビジュアル要素で検索できます。動画も同様に、登場人物やシーンごとにタグが付与されるため、必要なカットをすぐに抽出可能。
従来のようにファイル名や人力で付けたタグに頼る必要がなくなり、制作時間の大幅短縮につながります。
■自動タグ付け・メタデータ生成で管理の手間を削減
これまで担当者が手作業で行っていたタグ付けやメタデータ入力を、AIが自動化します。被写体・色・構図・ブランド要素などを自動的に分析し、関連するキーワードを紐付けることで、管理負担を劇的に軽減。
さらに、OCR(文字認識)によって画像内のテキストも抽出されるため、過去のキャンペーンコピーや商品名で検索できるようになり、「探せる資産」へと進化します。
■Adobeアプリとのシームレス連携で制作効率アップ
PhotoshopやIllustrator、Premiere ProなどのAdobeアプリと直接連携できるのもAI搭載DAMの強みです。
クリエイターはわざわざファイルをダウンロードせずに、DAM内のアセットをそのままアプリ上で呼び出して編集可能。完成データもDAMに自動で保存・バージョン管理されるため、最新版の所在確認やアップロード作業といった無駄を排除できます。
「探す・移す」から解放され、「創る」ことに集中できる環境が整います。
■バージョン管理と承認ワークフローの自動化
AIは制作プロセスの進行管理にも力を発揮します。
修正版がアップロードされると、自動的にバージョンを履歴として記録し、承認フローに沿って関係者へ通知。承認・差し戻しの状況も可視化され、代理店・マーケ部門・制作チーム間の認識のズレを解消します。
これにより、従来は数日かかっていた承認作業が大幅に短縮され、スピード感のあるキャンペーン展開が可能になります。
4. マーケティング・広告代理店にとってのメリット
■コンテンツ制作依頼から納品までのスピード向上
マーケティング部門や代理店が最も重視するのは「スピード」。SNS投稿やキャンペーンのタイミングを逃すことは致命的です。 AI搭載DAMなら、必要な素材を即座に検索できるため「担当者に聞いて探してもらう」プロセスが不要になります。さらに承認フローの自動化により、修正や差し戻しも迅速化。結果として、依頼から納品までのリードタイムが短縮され、市場の動きに合わせたスピーディーな施策展開が可能になります。
■ブランドガバナンスの強化(最新データの一元管理)
広告代理店や外部パートナーが関わるときに特に問題となるのが「古いロゴや未承認素材の誤使用」です。
AI搭載DAMでは、最新版のアセットが常に明確に管理され、古いデータには自動で「使用禁止」タグが付与されるなどの仕組みを備えています。これにより、ブランドの一貫性を保ちながらスムーズな制作・配信が可能となり、企業としてのブランドガバナンスが自然と強化されます。
■データ活用によるパーソナライズ施策の加速
DAMに蓄積されたアセットの利用状況をAIが分析し、「どの画像がよく使われているか」「どの素材が効果的だったか」といったインサイトを抽出します。
マーケティング部門はこのデータを活用し、ターゲットに響くコンテンツをスピーディーに選定・再利用できます。例えば「若年層向けキャンペーンでは、自然光で撮影されたライフスタイル写真が高反応」という傾向をDAMが教えてくれる、といったイメージです。
これにより、ただの“保管庫”だったDAMが、次の施策に活かせる“戦略ツール”へと進化します。
5. 事例紹介:AI搭載DAMが変えた制作現場
■広告代理店での制作フロー短縮
ある広告代理店では、複数のクライアント案件を同時進行する中で、素材探しと承認待ちが大きなボトルネックになっていました。AI搭載DAMを導入したことで、過去のキャンペーン素材を数秒で検索でき、類似の写真や動画も自動で提案されるようになりました。さらに、修正版の承認依頼もDAM上で自動化され、メールのやり取りはほぼ不要になりました。
結果、制作リードタイムは平均で30%短縮し、より多くの案件を同時に回せる体制が実現しました。
■マーケティング部門での社内承認効率化
大手メーカーのマーケティング部門では、新製品ローンチに伴うビジュアル制作に膨大な承認作業が必要でした。従来は「最新版がどれかわからない」「承認フローが属人的」といった課題が頻発。
AI搭載DAM導入後は、最新版アセットが自動で明示され、承認フローもシステム化。通知機能によって承認遅延も減少し、結果としてローンチ準備のスケジュールが1週間前倒しで完了できるようになりました。スピードだけでなく、社内外の関係者間での「安心感」も高まっています。
■制作チームと外部パートナーの連携強化
映像制作会社と外部の翻訳パートナーが関わるグローバル案件では、言語ごとのテキスト差し替えや字幕修正が頻繁に発生していました。従来はローカルデータをやり取りするため、最新版の混乱や差し戻しが多発。
AI搭載DAMを導入すると、バージョン管理が自動化され、外部パートナーもDAM経由で直接最新版にアクセス可能に。さらにAI翻訳補助機能により、差分確認や多言語テキストの置き換えもスピーディーに進められるようになりました。その結果、ミスの削減と納期短縮を同時に実現しています。
6. 導入を検討する際のポイント
■既存ツールとの連携性(AdobeやCMSとの相性)
AI搭載DAMを導入する際に最初に確認すべきは、自社で利用している制作ツールやCMSとの連携性です。
特にAdobe Creative Cloudとのシームレスな接続は、クリエイターにとって大きな生産性向上をもたらします。また、WebサイトやECのCMSとDAMが直結していれば、最新のアセットを即座に公開でき、運用効率が格段に向上します。
■ワークフローへの適応度
どんなに高機能なDAMでも、自社の制作・承認フローに合わなければ効果は限定的です。
承認プロセスを自動化できるか、外部パートナーとの権限管理を柔軟に設定できるか、といった点を見極める必要があります。AIが提案するワークフローの自動最適化機能も、チーム体制に合っているかどうかをチェックすることが重要です。
■コスト対効果と将来的な拡張性
AI搭載DAMは従来型よりも高機能である分、コストも高めになる傾向があります。そのため、導入コストに見合う効率化効果が得られるかを慎重に試算することが不可欠です。
さらに、運用開始後にデータ量が急増した場合や、利用部門が拡大した際に、スムーズに拡張できる設計になっているかどうかも確認しましょう。スモールスタートからグローバル展開まで柔軟に対応できるかが、中長期的な投資効果を左右します。
7. CIERTO DAMは、AI搭載&制作アプリ連携を実現
先に整理した「既存ツールとの連携性」「ワークフロー適応度」「コスト対効果と拡張性」――これらのポイントを満たすソリューションとして注目されているのが、VPJが提供するデジタルアセット管理システム「CIERTO」です。
■AdobeアプリやCMSとのスムーズな連携
CIERTOはAdobe Creative Cloudと直接連携できるため、PhotoshopやIllustratorからDAM内のアセットを呼び出し、編集後は自動的にバージョン管理して保存可能です。さらに、WebやECのCMSとも連動し、承認済みの最新素材をそのまま公開コンテンツに反映できます。
■AIによる効率化と自動化
CIERTOにはAIによる自動タグ付けや画像認識が搭載されており、素材探しの手間を削減。加えて、承認フローやバージョン管理もシステム化されているため、制作から納品までのリードタイムを短縮します。
■柔軟なスモールスタートと拡張性
初期導入は少人数のチームから始められ、後に利用範囲を全社的に拡大することも可能です。クラウドとオンプレ両対応で、業務規模やセキュリティ要件に合わせた運用ができます。コストパフォーマンスと拡張性を両立している点も、導入企業から高く評価されています。

8. まとめ:AI搭載DAMでクリエイティブ業務はどう変わるか
AI搭載DAMは、従来のように「資産を整理して保管する」だけでなく、検索や承認フローを効率化し、制作とマーケティングをシームレスにつなぐことで新たな価値を生み出します。これにより、制作現場は探す手間から解放されて本来のクリエイティブに集中でき、マーケティング部門や代理店はスピーディーかつ一貫性のある施策を展開できるようになります。
CIERTOのようなAI搭載DAMを導入することは、単なる業務効率化にとどまらず、企業が持つクリエイティブ力とブランド価値を最大限に引き出すための重要な一歩と言えるでしょう。