ホテル業界におけるブランディング強化のためのDX戦略

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デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が多くの業界を変革している中、ホテル業界も例外ではありません。DXを活用することで、ホテルは顧客体験を向上させ、競争力を高めることができます。本コラムでは、ホテル業界がDXを活用してブランディングを強化する方法について詳しく解説します。

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1. ホテル・宿泊業界におけるDXとは?

ホテル・宿泊業界におけるDXとは、デジタル技術を活用して業務の効率化を図るだけでなく、顧客体験の向上や新たなビジネスモデルの創出を目指す取り組みです。人手不足や業務負担の増加といった課題を抱える宿泊業界において、DXは競争力強化と持続的成長を実現する重要な経営戦略となっています。また、複数の施設やブランドを展開する企業では、統一されたブランドイメージの維持と効果的な情報発信が競争力の鍵となります。特にホテル業界におけるブランディングは、顧客の信頼とロイヤリティを築き、競争優位性を確立するため、デジタル資産の適切な管理と活用が不可欠です。

1.1 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か

DX(Digital Transformation)について、経済産業省は「デジタルガバナンス・コード2.0」において次のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

この定義が示すように、DXは単なるデジタル技術の導入ではなく、顧客視点で新たな価値を創出し、企業文化やビジネスモデル全体の変革を伴う取り組みです。ホテル・宿泊業界においても、デジタル技術を活用して顧客満足度を高め、競争優位性を確立することが求められています。

関連リンク:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」


1.2 DXとIT化・デジタル化の違い

DXは、単なるIT化やデジタル化とは本質的に異なります。

IT化・デジタル化は、アナログ業務やプロセスにデジタル技術を導入して効率化や省人化を図ることを指します。例えば、紙の宿泊者台帳をシステムで管理する、予約業務をオンライン化するといった取り組みがこれに該当します。

一方、DXはデジタル化によってビジネスモデルそのものを変革し、競争力を高めていくことを意味します。例えば、宿泊者の過去データを分析して顧客ニーズを把握し、地域経済の活性化にもつながる新しい宿泊プランを生み出すといった取り組みがDXに該当します。つまり、デジタル化は手段であり、DXはそれによって実現される変革そのものなのです。

2. ホテル・宿泊業界のDX推進が遅れている要因

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表した「DX白書2023」によると、宿泊業界のDX取り組み状況は他業界と比較して大きく遅れていることが明らかになっています。

産業別DX取り組み状況

DX取り組み割合 20%未満 20%以上30%未満 30%以上
産業群 ・宿泊業、飲食サービス業(16%)
・農業、林業、漁業
・運輸業、郵便業
・医療、福祉
・建設業
・製造業
・卸売業、小売業
・サービス業
・不動産業
・情報通信業(45%)
・金融業、保険業(45%)
・電気・ガス・熱供給・水道業

参考:IPA「DX白書2023」


宿泊業、飲食サービス業のDX取り組み割合は16%と最も低い水準にあり、最も進んでいる情報通信業や金融業の45%と比較すると約3倍もの差があります。
この遅れの主な要因として、以下の点が挙げられます。

IT人材の不足

宿泊業界では、DX推進に必要なIT人材の確保が困難な状況にあります。デジタル技術への対応力不足により、DXへの取り組み自体が進まない悪循環に陥っています。


予算確保の難しさ

特に中小規模のホテルや旅館では、DXへの投資予算の確保が大きな課題となっています。目先の業務に追われ、中長期的な投資判断が難しい状況があります。


業界特有の課題

人手不足が深刻化する中、スタッフの業務負担が増加しており、DX推進に取り組む余裕がないという実情もあります。しかし、DXに取り組まなければ業務効率化が進まず、さらなる人手不足を招くという負のスパイラルに陥るリスクがあります。


関連リンク:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書」

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3. ホテル・宿泊業界のブランディングにおけるDXの重要性

3.1 ブランディングと顧客ロイヤリティの関係

ホテルのブランド作りは、新規顧客の獲得だけでなく顧客ロイヤリティの向上にも寄与します。ブランドの約束事が明確にされていれば、消費者はそのブランドに対する信頼感を持ちやすくなります。また、ユニークなブランド体験を提供することで、顧客はそのホテルにリピートで訪れ、同時に他人に対してその体験を口コミで広めることが多くなります。これは、口コミの力が非常に強い現代社会において、ホテルのブランド力をさらに高める重要な要素といえるでしょう。

3.2 デジタル化が進む現代におけるホテルの象徴

デジタル化が進む現代、ホテルブランディングは更に大きな意味を持つようになってきました。ホテルのウェブサイトやSNS、オンライン広告など、デジタルなメディアを通じて、消費者がこれまで知らないホテルを初めて知る機会が増えているからです。このような消費者にとってホテルのブランドとは、具体的な建物や設備、サービスよりも、むしろオンライン上で見た広告イメージや情報、口コミ等の総合的なイメージが大きく影響します。したがって、オンラインでのブランディングはホテルの象徴となり、そのホテルが提供する価値や体験、ライフスタイルを伝える重要な手段となるのです。

3.3 顧客データの活用とパーソナライゼーション

ホテル業界におけるブランディング強化の一環として、顧客データの活用とパーソナライゼーションは欠かせません。現状、多くのホテルには、予約や利用履歴等から得られる大量の顧客データがあります。これらデータを有効に活用することで、個々の顧客が何を求めているのか、どのような体験を求めているのかを深く理解することが可能となります。また、顧客が持つ個々のニーズや嗜好に合わせてカスタマイズされたサービスを提供することで、顧客の満足度とリピート率を上げることができます。パーソナライゼーションは顧客との関係性をより一層深め、ブランドに対する信頼とロイヤリティを築くのに重要な役割を果たします。

3.4 デジタルマーケティングと顧客リレーションシップ

ホテル業界においても、デジタルマーケティングが顧客とのリレーションシップを深める上で重要な役割を果たしています。実際、デジタルマーケティングを通じて、顧客との密なコミュニケーションを行うことは、長期的な視野でみて企業の成長を後押しする重要な要素となります。さらに、デジタルマーケティングの恩恵を最大限に受けるには、顧客リレーションシップの維持と向上を目指した取り組みが求められます。例えば、客室予約はもちろん、新たなプロモーション情報やキャンペーン企画、特別なイベント情報などをいかに効果的に顧客に伝えるかが最大のポイントで、その仕組みづくりに向けた取り組みが重要です。

4. ホテル・宿泊業界でDXを導入するメリット

ホテル・宿泊業界がDXに取り組むことで、以下のような大きなメリットが期待できます。特にブランディングやマーケティング領域においては、デジタル資産の戦略的な管理と活用が重要な鍵となります。

4.1 デジタル資産の一元管理による業務効率化

複数の施設やブランドを展開するホテル企業では、各施設の写真・動画・ロゴ・販促資料などのデジタル資産が分散して管理されがちです。これらを一元管理することで、本部と各施設間の情報共有がスムーズになり、資料を探す時間や重複作業が大幅に削減されます。また、外部メディアや旅行代理店への素材提供も迅速に行えるようになり、マーケティング活動の効率が飛躍的に向上します。

4.2 ブランド統一性の確保とマーケティング強化

デジタル資産を適切に管理することで、すべての施設やチャネルで統一されたブランドイメージを維持できます。最新のブランドガイドラインに沿った素材を各施設が常に使用できる環境を整えることで、ブランド価値の向上につながります。さらに、旅行予約サイトやSNSなど多様なメディアに最適化された画像を迅速に配信できることで、顧客との接点を強化し、予約数の増加が期待できます。

4.3 顧客体験の向上とパーソナライゼーションの実現

デジタル資産を戦略的に活用することで、顧客一人ひとりのニーズに合わせた情報提供が可能になります。例えば、ビジネス客向けには会議室やワークスペースの画像、観光客向けには周辺観光地や料理の画像を最適なタイミングで提供するなど、パーソナライズされたマーケティングを展開できます。これにより顧客満足度が向上し、リピート率の増加や口コミでの評価向上につながります。

5. ホテル・宿泊業界におけるDX導入の企業事例

ここでは、実際にDXに取り組み成果を上げているホテル・宿泊業界の企業事例をご紹介します。

5.1 株式会社ケン・ホテル&リゾートホールディングス様の事例

株式会社ケン・ホテル&リゾートホールディングス様は、首都圏の高級不動産業の先駆者であるケン・コーポレーションのグループ会社で、ホテル・旅行・ブライダル事業を行っております。
「プレミアホテル」「CABIN」「山楽」などの自社ブランドに加え、HyattやHiltonなど世界有数の外資系ブランドともフランチャイズ提携し、35軒のホテル(国内26軒・海外9軒)、約9,300室を展開しています。



導入前の課題

全国にある各施設がそれぞれ画像や動画、ホテルロゴや紹介資料を個別に管理しており、本部との共有や館内での管理が煩雑になっていました。また、外部メディアや旅行代理店への素材提供にも時間がかかり、業務効率が低下していました。


導入したソリューション

デジタルアセット管理(DAM)システム「CIERTO(シェルト)」を導入し、35施設すべてのデジタル資産を一元管理する体制を構築しました。


導入時のポイント

・「一般公開用」と「社内用」という階層を設定し、公開範囲を明確に分類
・ゲストリンク機能を活用した外部共有の仕組み構築
・画像変換機能による各メディアへの最適化対応


活用方法と導入後の効果

一元管理により、各施設から本部へのデータ共有がリアルタイムで可能になりました。画像変換機能を活用することで、旅行代理店や外部メディアへの配信リードタイムが大幅に短縮されています。また、旅行代理店向けポータルサイトとの連携により、情報更新の業務負荷が大きく軽減されました。


同社の詳しい取り組みについては、こちらの導入事例で詳しく紹介されていますので、ぜひご参考ください。

6. ホテル・宿泊業界におすすめのITソリューションの紹介

6.1 ホテルのブランディング強化に最適なDAMの特徴

ここでは、ホテルのブランディング強化に有効なデジタルアセット管理(以下、DAM)システムを紹介します。DAMについての紹介は、こちらのコラム記事で詳しく紹介しておりますので、参考にしてください。DAMがホテル業界のブランディング強化において、非常に有効である理由と具体的な活用シーンについて紹介します。



1.一元管理によるブランド統一性の確保

ホテルブランドが多岐にわたる場合、各施設で使用されるロゴ、販促用画像、ビデオコンテンツなどのデジタル資産を統一することが難しくなります。DAMを導入することで、これらのデジタル資産を一元管理でき、各施設が常に最新で統一されたブランドガイドラインに沿った素材を使用することが可能になります。例えば、プレミアホテル、CABIN、山楽といったブランドがそれぞれ異なるビジュアルアイデンティティを持っていても、DAMを通じて一貫性を保ちながら運用できます。


2.即時共有とリアルタイム更新

DAMはデジタル資産の即時共有が可能です。これにより、国内外のすべてのホテルや関連メディア、旅行代理店が同じ情報にアクセスでき、最新のキャンペーン画像や動画、プロモーション資料を迅速に共有できます。たとえば、新しいキャンペーンを開始する際、すべてのホテルが統一されたビジュアルを即座にダウンロードして使用できるため、ブランドメッセージの一貫性が保たれます。


3.効率的な画像変換と配信

オンライン旅行サイトや外部メディアに画像を提供する際、異なるフォーマットやサイズが求められます。DAMの画像変換機能を活用することで、各メディアの要件に適した画像フォーマットやサイズに迅速に変換できます。これにより、従来のように画像編集ソフトを使って手作業で変換する手間が省け、配信スピードが大幅に向上します。例えば、新しいプロモーション用の写真を複数の旅行サイトに掲載する場合、DAMを使って短時間で各サイトの規定に合った画像を準備できます。


4.情報更新の効率化と負担軽減

旅行代理店向けのポータルサイトにおいても、DAMは有効です。DAMを利用すれば、各施設のコンテンツ(画像、動画、セールスツールなど)を一元管理し、ポータルサイトとリアルタイムで連携させることが可能です。これにより、ポータルサイトの情報更新がDAM側で完結し、作業負担が大幅に軽減されます。たとえば、新しい施設情報やプロモーション資料を追加する場合、DAMにアップロードするだけでポータルサイトも自動的に更新されます。


5.グローバル展開と地域特化の両立

DAMは、グローバルなブランド展開を支援する一方で、地域ごとの特化も可能にします。グローバル展開している場合、各地域の文化やマーケットに応じたプロモーション素材が必要です。DAMを活用すれば、各地域のニーズに合わせたカスタマイズが簡単に行えます。例えば、欧米市場向けのプロモーションビデオとアジア市場向けのビデオをそれぞれDAMに保存し、必要に応じて各市場に適した素材を提供できます。


6.効果的なキャンペーン管理と分析

DAMは、各種キャンペーンのデジタル資産を効率的に管理し、その効果を分析するツールとしても役立ちます。例えば、特定のプロモーション画像やビデオのダウンロード数や使用頻度を追跡することで、どの素材が最も効果的かを評価できます。このデータを基に、次回のキャンペーンではさらに効果的なデジタル資産を作成・配信することが可能です。

7. まとめ

ホテル・宿泊業界におけるDXは、業務効率化や人手不足解消といった課題解決だけでなく、顧客体験の向上や新たな価値創出による競争力強化を実現する重要な経営戦略です。 DXとは、単なるIT化やデジタル化ではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデル全体を変革し、企業文化や組織までも変えていく取り組みです。

本コラムで紹介した導入事例からも、DAMの導入により、本部と各施設間の情報共有がリアルタイム化され、外部メディアや旅行代理店への配信リードタイムが大幅に短縮されることが実証されています。写真・動画・ロゴ・販促資料などのデジタル資産を一元管理し、すべてのチャネルで統一されたブランドイメージを発信することで、顧客ロイヤリティの向上と新規顧客の獲得が実現でき、競争の激しいホテル業界において大きなアドバンテージとなります。

ホテル・宿泊業界がこれからの時代を勝ち抜くためには、ブランディング強化を軸としたDXへの取り組みが必要です。まずは自社のデジタル資産管理の現状を見直し、DAMの導入を検討することで、競争優位性の確立への第一歩を踏み出すことができるでしょう。

DAMについての詳しい紹介については、製品サイトを参考にしてください。

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執筆者情報

ビジュアル・プロセッシング・ジャパン編集部です。マーケティングや商品、コンテンツ管理業務の効率化等について詳しく解説します。

【株式会社ビジュアル・プロセッシング・ジャパン について】
デジタルアセットマネジメント(DAM)を中核に、多様化するメディア(媒体)・コンテンツの制作・管理・配信環境を支援するITソリューションをご提案しています。