1.1 商品情報の複雑化と管理の難しさ

小売業における商品情報管理は、かつては単純なものでした。商品名、価格、サイズといった基本的な情報を管理するだけで済んでいたのです。しかし、現在では商品のバリエーションが増え、複数のチャネルで販売する必要があるため、管理する情報の種類も大幅に増加しました。
例えば、オンラインストアでは商品画像や説明文、スペック、レビュー、さらに動画コンテンツまでもが重要な要素となります。また、顧客は常に最新で正確な情報を求めており、少しでも情報が不正確だったり更新されていなかったりすると、購買意欲が低下し、信頼も失われる恐れがあります。
さらに、各チャネル（自社ECサイト、マーケットプレイス、実店舗など）に合わせたフォーマットで商品情報を提供する必要があるため、情報の整合性を保ちながら管理するのは非常に困難です。こうした複雑化した商品情報を手作業で管理することは、人的エラーを招き、業務効率を大幅に低下させる原因となります。

1.2 チャネル間の情報不一致が引き起こす問題

チャネルが多岐にわたる中で、商品の情報が一貫していないことが多く見受けられます。たとえば、あるチャネルでは正しい価格が表示されている一方で、別のチャネルでは古い価格情報が残っている場合、顧客の信頼を損なうだけでなく、売上機会を逃すリスクもあります。
情報の不一致はブランドイメージにも悪影響を及ぼし、長期的には競争力の低下につながります。さらに、各チャネルで独自に商品情報を管理していると、更新作業が煩雑になり、ミスが発生しやすくなるため、効率性の面でも大きな課題です。

上記で挙げた課題を解決するためのソリューションがPIM（Product Information Management）になります。PIMは、商品情報を一元管理し、複数のチャネルに統一性のある情報を提供するためのシステムです。PIMを導入することで、商品情報を一箇所で管理し、必要な情報をリアルタイムで各チャネルに配信することが可能となります。多様な商品群を扱う小売業において、商品の情報を正確かつ一貫して管理し、様々なチャネルで一貫性を保ちながら配信することは、顧客体験を向上させ、ブランドの信頼性を高めるために不可欠です。

【PIMがもたらすメリット】

1. 商品情報の一元管理

   小売業において、製品情報はメーカー、サプライヤー、マーケティングチームなど、さまざまな部門から提供されます。PIMを導入することで、これらの情報を一元的に管理し、各部門がリアルタイムで最新情報にアクセスできるようになります。これにより、情報の齟齬やミスを防ぎ、顧客に正確な情報を提供できます。

2. 多チャネル展開の強化

   小売業では、店舗、ECサイト、カタログ、モバイルアプリなど、多くのチャネルで商品を展開しています。PIMは、これらのチャネルに適応した情報を自動的に生成し、一貫した商品情報を効率的に配信できます。これにより、マーケティング活動が迅速化し、顧客へのアプローチが円滑に行えます。

3. ローカライゼーション対応

   グローバル展開を行う小売企業にとって、各国・地域に応じた商品情報のローカライゼーションが重要です。PIMは、複数言語や地域に対応する情報の管理を容易にし、グローバルに対応した適切な商品情報管理を実現するため、効率的な市場展開が可能になります。

4. リアルタイム更新

   商品価格やスペックの変更など、頻繁に更新される商品情報を常に最新の情報として管理することが可能です。基幹システムやPLMなどと連携し、自動更新することで効率的に最新情報を管理することが可能となります。

5. 法規制対応

   小売業では、国ごとに異なる商品規格や法的要件が存在します。PIMは、これらの要件を効率的に管理し、各市場に適応したコンプライアンスを確保します。これにより、商品の違法販売やリコールのリスクを軽減できます。

6. メーカー、サプライヤーとの連携

   PIMは、メーカーやサプライヤーからの膨大かつ複雑な商品情報を効率的に管理し、正確で一貫したデータを提供するために非常に有効です。PIMであらかじめ定義されたフォーマットや規則に基づいて商品情報を登録をすることで、データのばらつきを防ぎます。煩雑になりがちな商品情報取り込みにおいてデータの統一や整合性を担保し、高い品質を保つことができます。

PIMは商品情報を一元管理するための強力なツールですが、さらに効果を高めるためには、DAM（デジタルアセット管理）との連携が重要です。小売業において、商品情報とともに画像や動画などのデジタルコンテンツが、顧客に訴求力のある形で提供されることが求められます。この点で、PIMとDAMの連携は非常に有効です。

【DAMとの連携によるメリット】

1. コンテンツと商品情報の統合管理

   PIMは商品に関するテキストデータを一元管理しますが、商品画像や動画といったデジタルコンテンツは、DAMによって効率的に管理されます。PIMとDAMを連携させることで、両者のデータが統合され、商品情報とビジュアルが一貫性を持って提供されます。これにより、顧客に対してより魅力的な商品を訴求できます。

2. マーケティング活動の効率化

   DAMによって管理される画像や動画は、WEBやSNSといったデジタル媒体に留まらず、カタログやチラシ、POPなど様々な媒体で活用されます。PIMと統合して管理することで、マーケティングキャンペーンの展開が迅速かつ効率的に行えるため、新商品発売時やプロモーションのスピードが向上します。

3. ブランド一貫性の確保

   PIMとDAMの統合は、商品情報とデジタルコンテンツを一元的に管理するため、各チャネルでの情報やビジュアルの整合性が保たれます。これにより、ブランドの統一性が確保され、顧客に対して一貫したメッセージを伝えることができます。 DAMについては、以下のコラム記事も参考にしてください。　 コラム記事：デジタルアセット管理（DAM）の重要性とは？ビジネスメリットの解説

小売業界における商品情報管理の課題に対して、PIMとDAMの両方を統合したソリューションは、最適な解決策となります。ここでは、当社が開発・提供する「CIIERTO」(シエルト）を紹介します。CIERTOは、商品情報管理（PIM）とデジタルアセット管理（DAM）の両機能を兼ね備えた次世代型のプラットフォームであり、小売業に特化した高い有効性を持つソリューションです。 CIERTOの最大の特徴は、PIMとDAMを完全に統合した点です。通常、PIMとDAMは別々のシステムとして運用されることが多く、情報の整合性を保つために手動での管理や連携が必要となります。しかし、CIERTOでは、一つのプラットフォームで両方を同時に管理することができるため、情報の重複やミスが発生しにくく、効率的な運用が可能です。

• PIMとDAMの連携による商品情報管理の一元化

  CIERTOでは、商品情報（PIM）と画像、動画、パンフレットなどのデジタルアセット（DAM）を一元的に管理します。たとえば、新しい商品をサプライヤーが登録する際に、商品名や価格、仕様などのPIM情報に加えて、商品画像やプロモーション用の動画などのデジタルアセットも同時に登録できます。この情報は、全てのチャネル（ECサイト、カタログ、店舗など）に統一した形で展開され、顧客に正確で最新の情報が提供されます。このように、CIERTOはデータとアセットを一貫性を持って管理するため、マーケティングの迅速化と業務の効率化が実現します。また、デジタルアセットの更新もリアルタイムで反映されるため、古い情報が誤って使用されるリスクが軽減されます。

• マルチチャネル対応とパーソナライズの強化

  CIERTOは、小売業の多様な販売チャネルに対応しています。ECサイトやモバイルアプリ、実店舗のデジタルディスプレイなど、あらゆるチャネルに商品情報とデジタルアセットを適切なフォーマットで配信できるため、一貫性のあるブランドイメージの構築が可能です。さらに、CIERTOは各チャネルのニーズに合わせて情報をカスタマイズする機能も持っており、ターゲット顧客に応じたパーソナライズが簡単に行えます。これにより、消費者により魅力的な商品体験を提供でき、販売機会の最大化につながります。

• デジタル資産の効果的な活用

  CIERTOは、マーケティング活動に必要な情報を統合管理しているため、全社的にそれらの資産を有効活用できるようにします。画像や動画については、CIERTO上でサイズやフォーマットを変換し再利用することができるため、利用目的に合わせたコンテンツ活用を促進します。
  例えば、マーケティングチームが作成したキャンペーン用の画像や動画を、営業部門がすぐに店舗やECサイトで活用することができ、これによってプロモーション展開が迅速に進められます。また、すべてのアセットはメタデータと連携しており、誰がどの素材をいつどのように使用できるかが明確化されるため、無駄な重複作業の削減や、適切な素材の再利用が促進されます。

• チーム間のスムーズなコラボレーション

  CIERTOを導入することで、企業全体でのコラボレーションが強化されます。特に、グローバルに展開している小売企業や、多拠点にわたる組織では、CIERTOの一元管理機能を活用することで、地域ごとに異なる商品情報やデジタル資産を適切に管理しつつ、全体として統一された情報共有を実現できます。さらに、CIERTOのデジタルアセット管理は、各チームが使用する素材の権利管理や使用目的の明確化も容易にするため、法的リスクの回避にも役立ちます。これにより、企業全体での効率的な運用が進み、デジタル資産を最大限に活用したマーケティング戦略の実現が可能になります。

小売業における商品情報管理の課題は、今後ますます複雑化していくことが予想されます。PIMは商品情報の管理を飛躍的に効率化し、マーケティング活動の基盤を支える重要なツールです。しかし、さらに効果を高めるためには、DAMとの連携が不可欠です。PIMとDAMの統合により、商品情報とデジタルコンテンツが一貫して管理され、顧客に対して魅力的かつ正確な情報が提供されます。PIMの導入を検討する際には、DAMとの連携を視野に入れることで、より理想的な商品情報管理システムを構築し、小売業の競争力を高めることができるでしょう。

本コラムで紹介した「CIERTO」の詳細については、こちらの製品紹介サイトを参考にしてください。